”超上手な演奏”に触れて考えたこと
きのうはブラアカの臨時練習後、吹奏楽に詳しい後輩についていって、「第56回東京都吹奏楽コンクール@府中の森芸術劇場どりーむホール」高校の部・全12団体の演奏を拝聴しました。いわゆる「都大会」です。もしかしたら高校生の演奏をじっくり聴くのは初めてだったかもしれません。当日の朝になって突然行くことにしたけれど、とても貴重な機会をもらいました。
追記:プログラムと賞の一覧(都吹奏楽連盟HP案内より一部抜粋)
前半の部 | 1 | 都立豊島高等学校吹奏楽部 | 銀 |
2 | 岩倉高等学校吹奏楽部 | 銀 | |
3 | 八王子学園八王子高等学校吹奏楽部 | 金 | |
4 | 駒澤大学高等学校吹奏楽部 | 金 | |
5 | 都立小平高等学校吹奏楽部 | 銅 | |
6 | 東海大学付属高輪台高等学校吹奏楽部 | 代表 | |
後半の部 | 1 | 豊昭学園吹奏楽部 | 銅 |
2 | 都立小山台高等学校ブラスバンド班 | 銀 | |
3 | 都立片倉高等学校吹奏楽部 | 代表 | |
4 | 都立杉並高等学校吹奏楽部 | 金 | |
5 | 佼成学園女子中学高等学校吹奏楽部 | 銀 | |
6 | 東海大学菅生高等学校吹奏楽部 | 代表 |
高校時代のぼくは都大会の1つ前の「予選」ですら銀賞までしか行けなかったし、ブラアカ団員としても現状、予選でのダメ金までしか経験できていません。したがって単純に比較するならば、きょう聴いた12団体すべてが、自分の吹奏楽経験の中では「格上」であり「上手」だということになります。しかしそんな「上手な演奏」の中にも、「上手」と「超上手」のようなレベル差があるんだ…ということに改めて気付かされました。伝わりにくいかもしれませんが、ことばを尽くして説明してみようと思います(当たり前の事実を遠回しに書いているだけのような気もします、ごめんなさい)。
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★「何をやりたいのかわからない」時間が限りなく0に近い
吹奏楽曲に明るくないぼくにとって、一見とらえどころのない難曲を扱う団体もいくつかありました。しかしそんな難曲であっても、一定程度のストーリー性、あるいは「この楽器・メロディラインを聴かせよう」という意志を伝えるように演奏できる団体が、おおむね金賞や全国大会推薦を勝ち取っていたように感じます。そのような演奏を自分たちがやれているかと考えると、大いに疑問が残ります(当然ながら自戒を込めて)。
★ダイナミクスで空気を支配できる
課題曲Ⅴや課題曲Ⅰ・Ⅳ(マーチ)における弱奏部など、一定の緊張を要する場面において、特に銅賞の団体では、常に蛇口から細く水が漏れているような、どこか空気に締りのないまま進んでしまう演奏が目立ちました。
その反面、上位団体は(ほぼ)無音と強奏の間を自由自在に行ったり来たりしていました。強弱が変わっても音質が荒れない技術を持っている上、強弱変化について指揮者とバンドの信頼関係がきちんと構築され、つうかあの仲になっているということなのでしょう。
★さながら”筒抜けの伝言ゲーム”のようである
上位団体の演奏において、異なる楽器の音が無駄に干渉しあい潰しあうことはほとんどなく、弱奏であっても各楽器がくっきりと独立して聴こえました。音楽の比喩としては無粋かもしれませんが、「伝言ゲーム」に喩えます。
ある楽器が「たまご」と言い、続けて別の楽器が「サラダ」と言うことで「たまごサラダ」というメッセージを伝えたいとします。このとき、同じ楽器でも奏者間で音の統一がなされていなければ、「たらこ」「たばこ」など別のことばが混じり、「たまご」というメッセージはぼやけます。「サラダ」も同様です。また、「たまご」の声がうるさすぎて「サラダ」が聞き取れない…というタイプの失敗もありうるでしょう。
それぞれの楽器・セクションが発する「たまごサラダ」が客席後方でもクリアに聞き取れた…という事実はなかなかに衝撃的でした。これまでぼくは自分の演奏が「聴こえない」と指摘されたとき、当該部分の音量を上げることばかり考えていたからです。しかし、やりかたはそれ一つだけではない。同じパートや同じ音形を持つ楽器と音を統一すること、そして他の楽器を立てるべき場面ではしっかりと身を引くこと(そうすれば逆に自分も立ててもらえる場面がやってくる)。バンド全員がそのような視座に立って練習を積んだ結果があの境地なのだということでしょう。
わがブラアカの副指揮(同期)は「縦と音程」について毎度厳しく指摘していますが、この部分を厳しく律することが、この「伝言ゲーム」の精度を上げるための最重要ポイントなのだということも改めて実感しました。
あ、そういえば、わたしみたいに緊張でテンパッて「からあげたべたい」とか全然関係ないメッセージを叫んでしまうような奏者もいませんでしたね。それは当たり前か(._.)
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ほかにも考えたことをちらほらと。
☆当然ながら、下位団体にも心を奪う演奏はある
評価には差があるものの、どのバンドもそれぞれに異なった魅力がありました。
銅賞団体の中では豊昭学園がわたしの好みでした。打楽器が最も効果的に使われている印象を受け(12団体中でも3本の指には入る)、特にティンパニの音質(中でもロール)がわたしの理想に最も近かった。
もちろんブラアカも同じですが、どのバンドにも絶対にファンはいるわけで、バンド特有の個性を失わないようにしたいと改めて感じました。
☆あいつら、98%くらい吹奏楽のこと考えてやがる
高校生の熱量はすごい。いま思い返せば、高校というのは吹奏楽のことだけ考えて生きていられる最後の時代なんですね。学問もバイトもやりたくなければやらなくていい。嫌でも吹奏楽以外のことをやらなければならない立場にあるぼくからすれば、あいつら、98%くらい吹奏楽のこと考えてるんじゃないか?とさえ思ってしまいそうな感じでした。逆に残りの2%が気になるね。
大学の部や一般の部のほうが技量的には上かもしれないけれど、高校の部に人気が集まるのは、きっとそのような「吹奏楽に懸ける青春」みたいな輝きを演奏の中に見て取れるからなんだと気付きました。
ブラアカの臨時練習では某曲の初回合奏でドラムをやりました(曲は諸般の事情により内緒です)。ぜんぜんソロパート・フィルイン等が固まらないまま適当に叩いてしまったのですが、合奏の録音を聴いてみたら、ぐっちゃぐちゃながらもとても楽しくて。後輩からも「すごく楽しそうでしたね(^o^)」と言われて。
月並みだけど、そのような楽しさこそ、大学生である自分が「98%」に近付くためになくしてはいけない感覚だと思いました。
そりでわ、無限にドラム譜練りをしまつ ぽやしみ~